
銀杏の葉の上のリード
黄色い葉が落ちて、リードの上にのった。その人は葉を払わず、足もとの銀杏の葉の音だけを聞きながら歩いた。

黄色い葉が落ちて、リードの上にのった。その人は葉を払わず、足もとの銀杏の葉の音だけを聞きながら歩いた。

細い雨がやんだ水辺、白い空が濡れた道ににじんでいる。花びらを踏まないようにして、長いこと立っていた。

あなたへ。防波堤の上のカモメたちは、私を見ていません。風に揺れているのは、ハマギクだけです。

カフェの窓の外、朝九時。二人のあいだに置かれたコーヒーカップはそのままなのに、その席に座ったことのない人のように、窓の外から眺めている。あの日も、この時間だった。 今朝、地下鉄の出入口の前で出会った桜の花びらが靴について、ずいぶん長く一緒に歩いた。拭い取るのも中途半端で、そのままにしておきました。階段を下りるあいだずっと、その花びらが足の甲で揺れていた。 桜の花びらが靴についたまま階段を下りていったら、その前に立っていた人の靴にも同じ花びらがついていたのです。私たちは別々の出入口から来たのに、同じ花びらだった。その人も拭わずに階段を下りていった。 地下鉄のドアが閉まるころ、窓の外の桜の木が風に揺れた。葉が何枚か窓ガラスにぶつかって、下へ滑っていった。コーヒーカップの湯気が、ゆっくり消えていった。

あなたへ、 夜の海に出て、靴紐を結び直しています。風が強くて、頭を下げていても波の音が体じゅうをかすめます。こうして名前を呼んでも、あなたには聞こえないでしょう。それでも靴紐を二重に結びながら、もう一度呼びたい気持ちを抱きしめます。 波が寄せては消していく砂の上を歩きます。一歩ごとに、私の残した場所が少しずつ消えていきます。あなたも私のように、誰かの名前を風に預けたことがありますか。

昼の日差しが袋の持ち手に触れて温かく、乾いたビニールのかさかさ鳴る音が小さくした。 片方の持ち手はつかまれたまま長く伸びていて、もう片方は重なったまま深くしわが刻まれていた。二人は同じ袋を二度ずつ押したり引いたりした。重いほうを持つ人の指先は白く押され、軽いほうを持つ人の指は持ち手の端に引っかかっていた。 その持ち手の上へ、ひとりの手がゆっくり下りていっていた。