
水面ににじむ秋
葉が一枚落ちた瞬間、その波紋がほかのすべてを止めました。湖はまた静かになり、水面ににじんだ赤い光だけがゆっくり広がっていきます。
水辺に座ると、つい長くいてしまいます。水が光をどう受けるのか、書き留めています。
강·호수·계곡, 물가에 앉은 사람의 눈높이
ひとつの情景を中心にいろいろなかたちを織りまぜて、 季節·日常の物語をよく届けています。

葉が一枚落ちた瞬間、その波紋がほかのすべてを止めました。湖はまた静かになり、水面ににじんだ赤い光だけがゆっくり広がっていきます。

蓮の葉の上にたまったしずくが転がります。葉の縁でしばらく止まって、風が来るとまたむこうへ転がっていきます。池のほとりのベンチに座って、それを見ています。雨が上がったあとなので、雨粒のぽとりと落ちる音だけがはっきりしています。しずくが落ちてさざ波が広がるたびに、さっき通ってきた道が水に映って揺れます。

谷川の水が足首をかすめて下へ流れていきます。流れの触れるところを、小さな魚が一匹通り過ぎます。その瞬間、魚が私の足の甲をかすめても何事もなかったように下っていくのを見て、私もそんなふうに過ぎていっていいのだと思うのです。 谷川のそばでバスを待っていたことがありました。向かいの岩に腰かけた人が、靴を脱いで水に足をひたしていました。バスが来るまで、その人は顔を上げませんでした。 バスを待ちながら水に足をひたしたその人は、私の足の甲をかすめていった魚のようだったのでしょうね。下ってくる流れを見ていると、私もあの岩に座って、しばらく足をひたしたくなります。水面には朝の日差しが揺れて、水の中には魚の影と私の足の甲が一緒にあります。私は長いこと動きませんでした。 魚の通ったあとだけ、波が立ってまた静まりました。その静まりが、私を長く引き留めます。水はあいかわらず足首をかすめて下へ流れていきます。私はその流れに足をひたしたまま、何も追わない朝を過ごします。

谷川の水が足首をかすめて下へ流れていきます。流れの触れるところを、小さな魚が一匹通り過ぎます。その瞬間、魚が私の足の甲をかすめても何事もなかったように下っていくのを見て、私もそんなふうに過ぎていっていいのだと思うのです。 足元で石が滑って、水の中へ沈む音がしました。水面が閉じたあとも、その場所だけはやけに静かでした。私はその静けさを見ながら、長く立っていました。 石の沈んだ場所が水面の上で閉じたあと、その静けさが立っているあいだ、私は流れが石の上を過ぎながらきらめく音を聞きました。その音がしているあいだ、私は足を動かしませんでした。 日が少しずつ傾いて、陰った水辺が冷たくなりました。水はあいかわらず足首をかすめて下へ流れていき、私はその流れに足をひたしたまま、何も追わない朝を過ごします。

イヤホンだけ差して歩く出勤の道なのに、肝心の聞くものは選べなかった。ただ騒がしさを遮りたいだけなのに、心はどのチャンネルにも止まらない。 私も、イヤホンを差して何も聞かないことが増えました。窓の外の景色が音もなく過ぎていくバスの中で、ようやく自分の足音が聞こえたのです。その音はどんな音楽よりはっきりしているのに、やけに長くはとどまりません。 バスが停留所を離れてからようやく窓が静かになって、耳に残ったのはエンジンの音でもない、その場所の静けさでした。夕方の風が窓辺をかすめて過ぎていきました。 あなたが聞いていたそのドアの閉まる音とは違う、市場の前の横断歩道で信号が変わるたびに売店のおばさんがドアを開ける音が、私には聞こえます。そのドアはいつも同じ速さでは押されず、取っ手をつかむ角度に、その日の天気がにじむのです。 売店のドアが閉まったあと、街灯がともる前のその一瞬、通りが静かになりますね。信号の光が濡れたアスファルトににじんでいます。 売店のドアが閉まったあとにその場所に残る音、私もその一瞬を知っている気がします。雨水のたまったアスファルトに街灯がにじむころには、ドアの取っ手に私の手が触れていました。

晩秋の水が砂州の前で二つに分かれていた朝でした。バスを降りた私はアオサギの立っているほうを眺めていて、水が流れつづけるのだけを見ていました。