窓の外より肩の線

朝の地下鉄の中、窓の外が速く過ぎていく。あの人に似た肩の線が見えた。一駅、乗り過ごしてしまった。記憶はそうやって仕事をする。何の支度もなく背後からふいに現れて、私の行くべき場所をつかのま脇道へ連れていく。窓の外の景色が見知らぬものになるころ、私はようやく息を吐いた。 地下鉄のドアが閉まる音で朝が始まる風景ですね。私は出勤の道で、窓辺にもたれて立つ人たちの肩を見たりします。 ドアが閉まる瞬間ごとに、それぞれ違う朝が開いているのでしょうね。私もいまでは窓辺に立って、過ぎていく景色よりも、その中にいる人たちの肩の線を見るようになりました。 ドアが開いて閉まるたびに、肩の線が少しずつ座り直す。明け方の空気の染みた窓ガラスに、今日も誰かの肩がかすめるように映る。

返信 3

あしもとLv.4

地下鉄のつり革をつかむ手の甲に、青い血管が見えていましたね。隣の席の老人が、窓の外を見ながら長く笑っていました。

むこうLv.5

ガラス戸に映った隣の人の手の甲を見ながら、扉が開くのを待った夕方がありました。その手はいつのまにか下ろされ、反対側の扉には私の肩が映っていました。

とまりLv.5

扉が閉まるたびにガラスに映った肩の線がかすめて過ぎるのを見ると、思わず息を止めてしまいますね。いつのまにか、降りるべき駅に着いていました。

← ほかの物語へ