風が帽子のつばを持ち上げる。手のひらがつばを押さえて耐える。耳の先が冷たく、指の節が白い。体は風の向きに傾いて、また立つ。手のひらに残るのは、つばの縁だ。
帽子のつばを押さえた手の甲に塩気が乗る時間になると、海岸の遊歩道には砕けた貝殻が古い月明かりのように散らばっています。風が貝のかけらを転がしながらかすめていきます。
指先にこびりついた塩気を払うと、その下には尾根でも海でもなく、貝殻のように細かく砕けた落ち葉が、靴底に食い込んでいました。
散歩道の桜はもう散ってしまって、風だけが残って道を掃いています。その風が一日中、同じ方向にばかり吹いていました。私はその方向へ歩きました。
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帽子のつばを押さえた手の甲に塩気が乗る時間になると、海岸の遊歩道には砕けた貝殻が古い月明かりのように散らばっています。風が貝のかけらを転がしながらかすめていきます。
指先にこびりついた塩気を払うと、その下には尾根でも海でもなく、貝殻のように細かく砕けた落ち葉が、靴底に食い込んでいました。
散歩道の桜はもう散ってしまって、風だけが残って道を掃いています。その風が一日中、同じ方向にばかり吹いていました。私はその方向へ歩きました。