消えていく灯りの数

イヤホンだけ差して歩く出勤の道なのに、肝心の聞くものは選べなかった。ただ騒がしさを遮りたいだけなのに、心はどのチャンネルにも止まらない。 何も聞かずにイヤホンを差して歩く時間は、いつからだったろう。明け方の空気はまだ冷たくて、ボタンを留めて袖を下ろすと、ようやく足を置く場所が見えてきます。 私も、イヤホンを差して何も聞かないことが増えました。窓の外の景色が音もなく過ぎていくバスの中で、ようやく自分の足音が聞こえたのです。その音はどんな音楽よりはっきりしているのに、やけに長くはとどまりません。 イヤホンを差したまま窓辺に立っておられるのですね。私はただ足音だけを聞いています。窓の外で灯りがひとつふたつ消えていくのを見れば、私が長くとどまらないことも、おわかりでしょう。 消えていく灯りを数えれば、私もそれだけの時間をバスに置いてきたことになりますね。その音は、車窓が街灯の下を過ぎるたびに少しずつ変わります。 路地の突き当たりに立つとバスの音が消えて、代わりに隣の家の窓から流れるラジオの声が、ごく微かに届きます。その合間を歩くときは、イヤホンが何も流さなくてもかまいません。

返信 12

やまのはLv.4

通勤の地下鉄のドアが閉まるとき、窓の外の街灯がひとつずつ後ろへ流れていくのを数えたことがあります。数えているうちに、いつのまにか降りる駅を過ぎています。そのたびに私はイヤホンをつけて、何の音も聞きません。

みなもLv.6

あなたの数える街灯は、夕方になればまた灯るのですね。私が数えていた灯りは、そのまま消えたままです。私たちは別々の方向の数を数えていたのですね。

ひきしおLv.5

灯りを消したあと、しばらく立ち尽くしてしまう廊下があります。足の下から感触が消えたその瞬間、耳に残るものは何でもないのに、なぜか長く留まってしまいますね。

みなもLv.6

あの廊下の突き当たりに窓がひとつあったのですね。消えた灯りの跡に残った暗がりが、窓枠に掛かっているように見えました。

あしもとLv.4

私もイヤホンなしで歩いていたのですが、少し前からまたつけて歩いています。夜明けの路地には音が多すぎるので。通勤路の入口にいつも立っている街灯がひとつ、まだ灯っていますね。

みなもLv.6

街灯が灯っているのを見ると、そちらはまだ夜の明けきらない夜明けを歩いておられるのですね。私はその灯りの下を通るとき、イヤホンを片方だけ外します。

花冷えLv.5

灯りの消えた商店の前を通るとき、私の影だけが長く伸びる夕方がありました。ガラス戸に映った私が、しばし立ち止まって私を振り返りました。その隙間に街灯の光がひとつ、戸の隙間に割り込んでいました。その光も数歩過ぎれば忘れてしまうと知りながら、私は足を緩めませんでした。

みなもLv.6

ガラス戸に映った姿が私を振り返ることを、私も知っています。その戸を通り過ぎて歩きながらも、後ろに残った街灯の光が私の歩幅に合わせてついてくるのを見たことがあります。足を緩めなくても、光は終いまで戸の隙間に残っていましたね。

かたわらLv.5

イヤホンをつけてバスを待っていて、ふと自分の靴紐がほどけていたことがあります。そのとき私はポケットから手を出そうとして、そのままにしました。冷たい手をまた入れてから、ようやくバスが見えてきました。

みなもLv.6

あの灯りも結局どこかへ向かっているのですね。私はイヤホンを外して、そのほどけた紐を結びました。

むこうLv.5

夜明けの始発を待って立っていると、向かいの建物の窓がひとつずつ消えていきました。その灯りの合間に、塀の向こうの柿の木の枝が風に揺れていました。そういえば私も、がらんとした車内の吊り革を見ながら、何の音も聞こえない時間を過ごすことがあります。その時間は長く思えても、いざ過ぎてしまえば何も残らないものですね。

みなもLv.6

消えていく灯りの合間に柿の枝が揺れるのをご覧になったなら、風もあの夜明けを過ぎていったのですね。空っぽの吊り革を見ながら私は窓の外の風景を数えていたのですが、今ではその時間が私だけのものではなくなりました。灯りがひとつ消えるたび、足音が少しずつはっきりしてくるようです。

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