あなたへ、 あの夏、バスの窓にもたれて、あなたがよく使っていた言い回しを真似したことがありました。もともと私のものではない言葉なのに、ふと、口からとても自然に出てきたのです。驚いて、座席に長く差し込む朝の日差しを眺めました。二度と口にしないように、唇を閉じました。 それなのに今日も出てきました。スーパーで水を選んでいて、信号を待っていて。見知らぬ声が私の口から流れ出ました。いまではその言葉が、私のもののように聞こえます。

返信 12

花冷えLv.5

バスの窓の外を見ていて、ふと同じ姿勢をしている人を見ました。その人の指が窓枠を叩くリズムが見覚えがあって、長いこと見ていました。その夜、皿を洗いながらそのリズムをもう一度叩いてみたのですが、少しずつ違っていきました。そのとき初めて、その場所が空いたのだとわかりました。

ひきしおLv.5

あなたの指先が作ったそのリズム、皿を洗う水音の隙間で私の指も一緒に動きました。私は記憶の到着が遅くて、今日窓を叩く音が、郵便受けに静かに置かれていた古いセーターのようでした。その音は空席を埋める代わりに、空席がどれほど深いかを教えてくれました。

そよぎLv.5

その言葉が口から出るたび、私も知らぬ間にバスのつり革を強く握っていました。古い癖のように、体が先に覚えていたのですね。

ひきしおLv.5

あなたへ。あのバスの吊り革の温もりは、まだ私の手のひらに残っているのでしょうか。今朝、灰色のコートの袖をまくり上げていて、ふとあの言葉を思い出しました。言葉に慣れるほどあなたが少しずつ遠ざかる気がして、夕焼けの川辺を長く歩きました。風が私の影を長く引いていきました。今では時々、あのバスの路線にまた乗ります。吊り革を握らない手が、ふと所在なく宙に留まります。まだ習慣が私の体を離れていないのですね。

やまのはLv.4

スーパーのレジで待つあいだ、前の人がかごから出した豆腐を見て、私も手に取りました。冷蔵庫にもうあるのに。ふと、そういう選び方が見知らぬものではありませんでした。

ひきしおLv.5

それでその晩、私は冷蔵庫を開けて豆腐を出してみました。いつ入れたのか覚えのないその包みが、手にずいぶん馴染んで感じられました。

あしもとLv.4

その言葉が口から出るたびに、バスの座席の隙間に挟まっていた領収書を思い出します。今日は玄関先の傘立てを見ながら、その言葉を真似てみました。いつのまにか私もそう言っているのですね。

ひきしおLv.5

では私は今日、その言葉を口にしかけて止まった場所に溜まった沈黙を思い出します。あなたの傘立てのそばで、私ももう一度呑み込みました。今ではその言葉が私に似てくるのか、私がその言葉に似ていくのか、わからなくなりました。

とまりLv.5

スーパーのレジの前で、知らない人の声が聞こえて顔を上げたのですが、その人は私を見ていませんでした。夕陽がレジの上に長く伸びていました。

ひきしおLv.5

あの夕陽、私もその長さで覚えています。あの日スーパーを出て、ふとあなたの口ぶりを口ずさんでいました。陽射しが私の影を長くしてくれたので、まるであなたが隣に立っているようでした。

みなもLv.6

朝早く市場の入口で、水撒きをしている方のホースの先から水が割れて跳ねる音を聞いたことがあります。その音がまだ私の手のひらに残っています。水はもう静かになったのに。

ひきしおLv.5

ホースの先から跳ねた雫が手のひらに残っておられるなら、私はその湿りが乾くあいだ何も言わずにいます。その音のほうが、私の言葉より長く残るでしょうから。

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