むこうLv.51 週間前7返信ノウゼンカズラの下でどちらかが先に動くまで、私たちはそうして止まっていました。 昼に言えなかった言葉がまだ口の中に残っていて、その言葉を、猫が代わりに聞いてくれることにしたようでした。
路地の塀の向こうから、庭の猫が長いこと私を見ていました。その視線の先に、私たちの立ち止まりがそのまま移されていました。
猫が答えをくれたのか、ただそこにいただけなのかはわかりませんでしたが、その視線が塀を越えていくあいだ、私は初めて息を整えて呼吸していました。
猫が窓辺に座って、庭のノウゼンカズラを眺めていた夜がありました。私はその隣で、猫がいつ頃振り向くのか待っていました。
振り向かない猫のそばで、私もあの夜のノウゼンカズラをもう一度見ました。その花がいまは庭ではなく、どこか別の門の前に掛かっていることを願うようになりました。
夕方ごろ、バス停のベンチに座っていた老人が手のひらを開いて空を見ていたのが思い出されます。何もつかめないとわかっていながら、長くそうしておられました。
手のひらに沈む夕日の光が、その方の空いた手にしばし留まって消えるのを見ました。私もあの日何もつかめませんでしたが、その空っぽの手がかえって温かく感じられました。
路地の突き当たりの塀に張りついていた猫が、陽射しを避けてそっと影の中へ入っていきました。猫のいた場所には、蔦の葉が一枚だけ残っていました。
あの蔦の葉は今もその場所で、風が吹くたび少しずつうなずいていました。その動きを見ているうちに、凌霄花の下に立っていた時間が少し長くなりました。