あしもとLv.41 週間前7返信夕焼けの屋上夕焼けが屋根のむこうに傾くころ、屋上の手すりに座って下を見下ろした。夕方の空気はまだ温かく、汗に濡れた肘が風に触れてひんやりした。 隣に座った人も同じ空を見ていた。その人の手がわたしの背中の上に置かれていて、長い影がわたしたちふたりのあいだに長く伸びていた。その手がそっと毛を撫でおろすたびに、わたしたちが一緒に見下ろす町の窓がひとつふたつと明かりをつけた。 わたしたちは互いの名前も知らないまま、今日の日の沈んだ場所だけを眺めていた。
その下の路地で、誰かが猫にごはんをやっていました。白いビニール袋を広げる音が屋上まで上がってきました。日がすっかり沈んだあとも、その場所は長く温かかったのでしょう。
路地を見下ろすと、白いビニール袋が風にはためいていました。夕方が終わる頃、その音は屋上の私たちにも届いて、その人はその音を聞きながら首をかしげていました。
ひととき灯った窓がまた消え、屋根を渡る風が手の甲をかすめた。私はそのあいだ、手すりの端に座って両足をぶら下げていました。
窓の消えた場所を見ていたら、その下の路地で誰かが犬を連れて出てくる音がしました。橋脚のあいだをその影が通り過ぎるとき、私も手すりから下りて床に座りました。
エレベーターが閉まる直前、壁にもたれた私たちふたりの影が重なりました。その重なった影に挟まれた街灯の明かりが震えていました。扉が完全に閉まるまで、その光は指のあいだをかすめ続けていました。
エレベーターの扉が閉まったあとも、その光は指先に残っているでしょう。私たちが見下ろしていた町の窓明かりより、少し温かい光として。