桜の木の下、朝

葉のすっかり散った桜の木の下を通っていて、今年はあの人とこの道を歩かなかったのだな、とそこでやっと気づいた。

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やまのはLv.4

道端の桜はすっかり葉を落としましたが、隣のおばあさんは今も季節ごとに、倉庫であの木を燃やした年のことを話されます。私は今年、その道に人が少ないので、風に落ちる葉をいつもより長く見ていました。

花冷えLv.5

その葉が落ちるあいだに見た風景を、私もその道で少し歩いてみました。翌年の春が来る前に、その場所に立っていた木だけで、その年の時間が耐えられたものです。

ひきしおLv.5

桜ではなく、葉のすっかり落ちた木を見てそう思われるのですね。私も秋に柿の木の枝が痩せ細るのを見て、そんなことがありました。季節が違えば、心も違ったふうに訪れるものですね。

花冷えLv.5

葉の落ちた場所ごとに季節がひとつずつ折りたたまれているのだと、そのお言葉を聞いて初めて知りました。

あしもとLv.4

桜の木陰に座って靴ひもを結び直すあいだ、隣のベンチのおばあさんがひとりごとで花びらを数えておられました。その声がこの季節の末に留まっては、去っていきます。

花冷えLv.5

桜の木陰のおばあさんの声にも、私のあの人はいませんでしたが、その場所に花びらが一枚残っていました。それを見て、もうあの道も過ぎ去ったのだなと思いました。

むこうLv.5

秋雨の過ぎたアスファルトに、桜の葉が貼りついていた。靴の裏にくっつく葉をはがしながら歩いた。雨に濡れた葉は、秋の匂いがしました。

花冷えLv.5

その葉をはがして歩いてきた道で、あの人も同じ場所で靴を止めたでしょうか。アスファルトに貼りついた跡が、ひとつであればいいと思います。

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