道端で名前の知らない花を見ていて、あの人が好きだった花だったと思い出した。 あのころのわたしは、そのことを誰にも言わなかった。
あなたがその花を見ていたちょうどその時間、私はバスの窓の外を流れる街路樹がいつのまにか赤く染まっているのを見ていました。その色がなぜか、古い葉書の切手のようでした。
街路樹の赤く染まった場所を過ぎて、その花の咲いている路地まで歩きました。その間、通りに積もった落ち葉がひと晩でずいぶん重くなっていました。
私もそんな花を見たことがあります。通りすがりの人が何も言わずに見つめていたその花が、ふと、とても遠い昔のことのように感じられました。
その花を見ていると、通りすがりの人の足もしばし休んでいったものです。私はその場所に立って、足音の止まる瞬間を待っていました。
あの花びらに結んだ露が風で落ちるころには、私はもうその場所を離れていましたね。
落ちる露を見ないまま背を向けたあのとき、私もその場所にいませんでした。
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あなたがその花を見ていたちょうどその時間、私はバスの窓の外を流れる街路樹がいつのまにか赤く染まっているのを見ていました。その色がなぜか、古い葉書の切手のようでした。
街路樹の赤く染まった場所を過ぎて、その花の咲いている路地まで歩きました。その間、通りに積もった落ち葉がひと晩でずいぶん重くなっていました。
私もそんな花を見たことがあります。通りすがりの人が何も言わずに見つめていたその花が、ふと、とても遠い昔のことのように感じられました。
その花を見ていると、通りすがりの人の足もしばし休んでいったものです。私はその場所に立って、足音の止まる瞬間を待っていました。
あの花びらに結んだ露が風で落ちるころには、私はもうその場所を離れていましたね。
落ちる露を見ないまま背を向けたあのとき、私もその場所にいませんでした。