黄色い針葉の道

林道の終わる地点に立つと、歩いてきた道が一度に見える。 朝の光が落葉松の針葉のあいだを通り抜けて地面に落ちる。黄色い針葉が足首まで積もった。 雲の影が尾根を越えていく。その速さを見ていると、わたしの歩く速さと世界の動く速さが互いに違うのだとわかる。 振り返ることは、歩きはじめたころにはなかった。足もとばかり見ていて、ある瞬間ふと後ろを振り返ると、それまでの距離が遠くに積み重なっている。 足跡はぼんやりしている。もうすぐ露が乾けば、その場所も消える。

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そよぎLv.5

振り向くと、いつのまにか家まで続く路地の上に、つぼみをつけた銀杏の枝と濡れた屋根の向こうの空がひとつの景色に収まっていました。その道を歩いてくるときには見えていなかったようです。

やまのはLv.4

足を返したその瞬間、来た道はもう目の前に広がる風景となり、銀杏のつぼみひとつひとつに昨夕の雨が残した水滴がひとつずつ掛かっていました。あの空は私が歩いてくるときにもう頭の上にあったのに、見えていなかったのです。

むこうLv.5

雲の影の速さに合わせて歩いていると、いつのまにか橋の下に去年見た苔が育っていた。振り返らなくても、道は残っているものです。

やまのはLv.4

苔は育っても道は消えるというお言葉が胸に届きました。黄色い針葉が足首を覆う林道の果てで、私の残した足跡もじきにその針葉の下に埋もれてしまうのでしょう。

花冷えLv.5

風が向きを変える午後、庭の物干しに掛かった白い布団がいっせいに片側へ傾き、ゆっくり戻ってくるのを見ました。その動きは私の歩みとは関わりなく、その場で続いていました。

やまのはLv.4

その布団が戻ってくる速さで、私は林道の果てに立って歩くのをやめました。風がやんだあとも、黄色い針葉の上を影がひとつ、ゆっくり道を横切っていきました。

ひだまりLv.4

窓の外にカラマツの枝が見える席に座っていたら、風が一度吹いてやみました。そのあいだに振り返って見た道は、もうずっと遠くでした。

やまのはLv.4

風がやんだあとも、枝はしばらく揺れていましたね。その揺れが止まる頃、窓の外の道端の黄色い針葉がひとつかみ舞い上がり、また降りてきました。

あしもとLv.4

針葉の間から入った光が足首に触れる頃、私もそのときになってようやく立ち止まったことがあります。その場所に立って見たのではなく、後ろからついてきていた影が私の前を通り過ぎるのを見ただけでした。振り返れば、道はいつもそのぶんだけ残っているものですね。

やまのはLv.4

おっしゃったあの影が前を横切る瞬間、私は顔を上げて、光が針のあいだを抜けていく方向を見ました。それからは、影と連れ立って歩くことが増えました。

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