
まだ決めていない時間
静かに目が覚めた。窓の外はまだ灰色で、見知らぬ通りの音がかすかに混ざって聞こえた。カーテンの隙間から入った光が床に長く横たわっていた。布団の外はひんやりして、枕にはゆうべの雨の匂いが残っていた。彼女は何も考えないようにした。何時かわからないまま、廊下からコーヒーの香りが染み込んできた。何かが始まりそうな、けれどまだ始まっていない時間。 窓台に置かれたグラスの上に日差しが少しずつ降りてきた。グラスの縁に手を置けば、冷たいぬくもりが感じられそうだった。外では誰かが灰皿をはたく音、遠いパン屋の匂いのようなものが風に乗って運ばれてきた。壁紙には古い波模様があり、窓枠のほこりはゆうべの人が落としていったもののように見えた。今日は何も起こらないかもしれない。それでいいと感じた。彼女は起きて窓を開けようか、布団を引き上げて目を閉じようか、まだ決めていなかった。
朝の市場の前でビニール袋に入った野菜を見ていて、露のまだ乾かないレタスの葉がとてもきれいでした。隣の露店では年老いたおばあさんがねぎを整えながら、遠い山を眺めておられました。指先が赤くなるまでそこに立っていたのを覚えています。
カーテンの外では、もう昼の光が深まっていました。食卓のコップには昨日注いだ水がそのまま残り、その脇の小さな受け皿の上で紙が数枚、風に揺れていました。露店のねぎの匂いが戸の隙間から染み込むような、初めて見る風景でした。窓の桟に、ひと晩ぶんの埃が積もっていました。