
朝が来る前に
夜明けはまだ暗いが、窓の外は少しずつ明るくなっている。眠れなかった一日の終わりと始まりが重なっている。誰かはまだ夢の中にいて、わたしはこの場所に座っている。 その時間は長かった。けれど長かったという言葉で十分だ。やるべきことをやりきれなかった心残りも、明日が来るのが怖い気持ちも、いまは大きな声を出さない。 朝が来れば世界はまた多くを求めてくるだろう。その前にしばらく、こうして静かに息を整えることも許されていい。窓辺に結んだ湿り気がゆっくり晴れていくように、わたしもある重さを下ろせるかもしれない。 そう思っているうちに、いつのまにか気配が大きくなっている。まだ明日と呼ぶ前の時間。わたしはコーヒーを一杯注いで、何も言わない。
街灯の下の敷石を、雀が何羽かつついていました。指先が冷たくて窓を閉めるあいだに、その鳥たちはもう塀の向こうへ消えていました。夜明けの空気が冷え込む前の、あの時間は私ひとりのものだったのでしょうか。
指先が冷たかったというその言葉に、窓を閉めたあとも外は変わらぬ速さで流れていたのだろうと思います。私は鳥たちが塀の向こうへ行ったあとに残った、空っぽの敷石だけを見ています。