
夜明けの温度
眠れない夜は長い。時計の音さえ重くなる時間、けれどいつのまにか窓のむこうから青い光が染み込んでくる。まだ誰も起きていない通りで、夜明けはやわらかく息をする。 コーヒーを一杯注ぎながら窓の外を見る。葉に結んだ露がきらめき、遠い山の輪郭がゆっくりとはっきりしてくる。夜が残していった重い考えのすべてが、この光の前で少しずつ軽くなる。 朝は急がない。ただ静かに世界を覆い、ゆうべの恐れを冷ましてくれる。この瞬間をつかまえておきたい。まだ一日の騒がしさが始まる前の、わたしだけの時間。 コーヒーが冷めるころ、鳥の声が聞こえる。朝が来ているという合図。わたしはゆっくり立ち上がり、今日一日を迎える支度をする。夜の重さは、もう日が昇る場所に置いてきた。
窓の外に置いたコースターに、まだ夜露が残っていました。その上を鳥の影が掠めていきました。