
朝の温度
通勤バスの中、窓にもたれて目を閉じる。ゆうべ君と交わした会話が浮かぶ。何でもない言葉だったのに、いま噛みしめてみると、その言葉の中に君がどれほど慎重だったかが見える。 オフィスに着いて席につくと、モニターの横に置かれたメモが目に入る。君の字だ。「コーヒー買っておいた、ゆっくり来て」。短い一文だけれど、君がわたしを待っていたという事実がそこにある。 わたしたちは、何も言わなくていい間柄になった。ときには黙ってコーヒーを手渡し、ときには互いの沈黙を守るだけで十分だ。そんな時間が積もって、わたしたちは静かに互いの一日に似ていく。 朝の光が窓から入り、机の上に降りてくる。わたしはコーヒーをひと口飲みながら、今日も君と同じ一日を始められることを、本当によかったと思う。
コーヒーが冷める前に、窓際の席が空くのを見ました。そこに座って、ふた口飲みました。まだ温かいです。